国語教育いろいろ

高校、大学の現場での議論のいろいろです

セミロングホームルーム テキストの読ませ方

模擬授業お疲れ様でした!

おもしろい教材でしたね。

やりたいこともはっきりしていたし、

そのための準備も入念でした。 

 

話題になった

「どう読ませるか」問題。

整理しておきます。

 

⭕️一読/再読

⭕️黙読/音読

⭕️全読/部分読み

 

実際には、

これらの組み合わせを

教室の実態と目標に合わせて

アレンジすることになります。

このことは

そうはっきり自覚しておく必要があります。

テキストの読ませ方自体が、

授業のデザインをほぼ決定づけるからです。

 

一読法は、

教材研究の時みんなでやった形に近いです。

範囲を限定して掘り起こしていきましたね。

しかし、一方、後に進むほど、

前に戻ったり、全体を見渡したりする視点が

中心的になってきたでしょう?

これは、再読法が混入しているわけです。

 

私たちの通常の読書でも同じことが起きています。

何日かにわたって読書するとき、

前の方に戻って伏線を確かめたり、

概念規定を再確認したりするでしょう?

 

⭕️一方通行の読み→行ったり来たりの読み

 

国語教室では、

将来必要になる、この読み方の使いわけを

自覚的に習得できるようにデザインすべきです。

この過程は、

はじめの自分の読みがいかにいいかげんなものか、に気づいていく過程でもあります。

ぼーっと読んでたら、

「えっと、瀬尾くんはどこに座ってるんだっけ?」みたいなことにもなる。

「三読法」という授業の定式は、

初読はいいかげんだという前提に立ちます。

「通読・精読・味読」などと言われますが、

これはだんだん解像度が上がっていき、

自分の問題意識が高まるような

スパイラルな読みの過程をデザインするものです。 

 

さて、教室での読ませ方ですが、

長くても各自がテキストに没入してくれるような教室なら、黙読でもいいでしょう。

(それができるメンバーなら事前に家で読んでおくこと、という形でもできちゃう)

また、黙読の練習自体を目標にするなら、

それでいい。

ただ、実際の中高の教室では、それはなかなか期待できません。

(「こころ」など長いものを扱う段階までに、

長く集中して読める力を養いたいものですが)

 

比較的安定した形は、

⭕️範囲を限定した音読→その範囲の再読(黙読と作業)

という組み合わせで、

教室全体のペースを保ちつつ進める方法です。

 

最初の音読には、漢字などの読み方の指導も含まれます。

生徒を指名して立たせ、指定した範囲を音読させます。

このときは音読者も聞いている人たちも、

まず音としてテキストをたどれればオッケー。

先生は、生徒の音読をよく聴くこと。

誤りやひっかかったところ、引っかかりそうなところには即しかし簡潔にフォローする。

音読を助けてあげる。

恥をかかさない。

 

一人分の担当は、長過ぎず、短すぎず、ある内容のかたまりで区切ります。

形式段落などを利用すればよいですが、

長さがアンバランスになることもあるので、

先生が独自に区切るのがよいです。

 

初読では、内容を理解して音読している生徒は少ないことに気づくでしょう。

音読するのに精一杯。

でも、それでよし。

ここでの音読は、

教室内での作業範囲の確認と共有です。

ここから、

各自の作業や黙読タイムが始まります。

「今、音読した範囲について、

次のことを考えてください」

といった指示を出していくことになります。

 

これは、大学のゼミなどでやる読書会、講読でも同じです。

範囲の音読、範囲の確定、そして、議論。

音読しない場合もありますが、

外国語や古典の場合は、ポイントの部分は音読するはずです。

 

音読は、目で追うだけよりも、

よりテキストの言葉、表記を忠実にたどることになります。

声に出して初めて気づくことも多い。

視写すると、もっとたくさん気づきます。

⭕️目だけー目と声ー目と手

今回の模擬授業で示された、

「鉛筆を持って読む」というのは、

そういう意味で、

テキストと切り結びながら、

しっかり理解しつつ、理解の形跡を可視化しつつ読むことを目指すことになっていたと思います。

音読によってみんなが同じ場所を注視している状態をつくる。

その上で問いに入る。

自分のペースでしっかり黙読し、再読し、印をつけたりできる時間をとる。

さらに、話し合える時間をとる。

音読は、

教室をその態勢に持っていくための

弾頭のような働きをしています。

 

鉛筆を持って読む、の参考文献

復刻版 第三の書く
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