国語教育いろいろ

高校、大学の現場での議論のいろいろです

「文化祭」対話活動から 2021年

 ●「文化祭」対話活動から 2021年

(主張、目的、昇華)
・私は半年くらい前に読んだ本の中で、平田オリザさんの「コロナで明らかになった日本の最も弱い部分」という文章に共感することがありました。その文章の中では対話について書かれていて、私はそこで対話には「異なる価値観を持った人同士の価値観のすり合わせ」が大切だと思っていました。今日の授業で読んだ「対話の精神」の中でも異なる価値観を持った人と価値観を擦り合わせることが一番大切だと思いました。そしてその後、対話を意識しながら話してと先生がおっしゃっていたので、価値観を擦り合わせることを意識しました。しかし、私達の班はなかなか意見が出ず議論があまり進みませんでした。先生の話にもありましたが、今日は対話するために他にも必要なことがあると学びました。それはまず主張することが必要ということです。また、その主張には目的が必要ということです。他の班の発表で凄くいいと思ったことがありました。その班の人たちは目的について話し合っていて、目的の擦り合わせを行っていました。そこから、目的のある主張→価値観の擦り合わせというプロセスで対話が行われるのではないかと思いました。

・今回の授業では主に「対話」を扱った。対話とは何かをよくよく学べだと思う。特に対話の前提条件として、主張があるということと、目的があるということの2点は非常に勉強になった。中でも目的に関しては、文化祭の出し物という一例だけあげても、自分も相手も楽しめるようなイベント作りを目的とするのか、または安全性や集客性を目的とするのかなど、様々な目的によって三者三様の対話になっていくということがわかった。自分達の班で行った対話では、単なる折衷案で終わってしまっていたように感じる。各々の主張を聴取し、目的を汲み取り、そこから新たな案として対話を経て昇華させていくことをこれからの学習でも意識したい。今回の授業の「対話」とは、主張のぶつかり合いを摺り合わせるということなのだろうと思った。

▼「なぜそれをやりたいのか、目的は何なのか、そして、全員の目指すゴールはどこなのか」
 このことを意識し、そのすりあわせとしての対話を行える集団は、すぐれているといえるでしょうね。価値観自体はそうかんたんに変わるものではなくても、プロジェクトの成功のために〈考え〉は自在に進化させうること。そこから新たな地平を発見すること。生き残る集団とはそれができる集団でしょう。

(主張と価値観)
・私のグループは、特にこれがいい!という強い意見を持った人はおらず、これだったら組み合わせられるんじゃない?とまとまるように話が進むグループだったので、価値観を根気強く説明するということはなかった。終わって周りのグループの話を聞いたとき、まず自分の価値観がどのようなものか自分で理解し定まった状態でなければ、誰かに説明し、その価値観の根本をわかってもらうという本当の意味での対話はできないのだなと感じた。また、自分の意見の根本をわかってもらうために説明するためも、相手の意見をうまく咀嚼するためにも、前回いろんな人が言っていた国語力(国語の授業を通して培う能力)が必要になるのだなと思った。

▼理想的な、ものすごく立派な人どうしの対話というものがあるとしたら、確かに、「自分の価値観がどのようなものか自分で理解し定まっている人」どうしが、「その価値観の根本をわかってもらおう」とし合う中で、さらに気づき合い、価値観が深まる対話となることでしょう。
 NHKに「SWITCHインタビュー 達人達」という番組があります。
 「異なる分野で活躍する2人の“達人”が登場。番組の前半と後半でゲストとインタビュアーを「スイッチ」しながら、成功への道筋や、独自の哲学を語り合う。それぞれの“顔”が見えるだけでなく、通常インタビュー番組にはない“化学反応”が醍醐味のクロストーク。」
 これなんかは、確立した価値観のぶつかり合いが、あらたな「化学反応」を呼ぶところをねらいとしているのでしょう。
 しかし、普通の人間には、なかなか「自分の価値観がどのようなものか自分で理解し定まっている人」はいません。しかし、そんな私たちにも対話は可能だと思います。まずその時に思った「考え」を出す。出すことがスタートです。そのボールは相手によって跳ね返り、変化していきます。「考え」が育っていくこと、自分が最初によって立っていた価値観が何だったのか、途中で気づくこと、そして価値観か更新されていくことに喜びを感じること。私たちの日常の対話とはこのようなものではないでしょうか。

(体感すること)
・本日の授業で、対話について学習したが、それを実際にグループワークで体感したことによってより対話する重要さを感じた。私の入ったグループでは、持ち寄った文化祭の出し物が全員バラバラで、「お化け屋敷」「ワッフルカフェ」「げき」「男装女装カフェ」だった。対話の意味をイマイチ掴めてなかった私は最初「物語調のお化け屋敷で男装や女装をして、出口でワッフルを配れば解決?」などと思った。しかし、グループでの対話を進めるうちに「なぜそれをやりたいか」という目的に注目することができて、結果的に全員の目的を織り交ぜた、納得出来る案になった。みんなの意見を表面的に摺り合わせるのではなく、目的を共有してお互いの妥協点を見出すことが対話に置いて重要であると分かった。私1人で想像するだけでは、決して「対話」というものを捉えることが出来なかったと思う。今回のグループワークでクラスメイトの考え方や話のまとめ方などを体感して、私自身すごく学ぶところが多かった。

(要素として抽出・アシストのしかた)
・今回の対話の授業は大きな気づきが得られるものだった。
 私の班では「劇」「コスプレカフェ」「ワッフルを提供する」「お化け屋敷」という4つの案が出たが、そこからやりたい目的というのを要素として出してそれが達成されるならこういう形じゃなくてもいいよと譲歩し合い(私はかなり主張してしまったと反省している)最終的に<コスプレお化け屋敷>という形に決定した。
 この対話で、具体案を単純に掛け合わせるだけじゃなくて要素として抽出すれば、ぱっと見は意見が反映されてなくても、それぞれの主張が混ざった結果を生み出せるのかと大きな気づきになった。自分が高校生中学生の時にこういうことができていれば!とすごく感じた。
 今回の対話実践はうまくいったと感じているが、それは班員それぞれが主張を持っていたというのが大きい一方、先生が途中で入ってきてボソッとアドバイスをくださったというのもあったと思うので自分が先生になった時にこういうアシストをしたいと思う。

(疑問)
・全体発表を聞いていて、やはり”やりたい”主張があると対話は進みやすいのだなと感じたが、では主張が出にくい状況ではどのように進めたらいいのかと考えるきっかけにもなった。
 例えば今回の文化祭の出し物というテーマなら”やりたいもの”だけじゃなくて”これはやりたくない”ということだったら何か主張したいことが生まれるかもしれないので、そもそもの主張のテーマを少し変えてみたりするなどはどうかなと思った。
 また、今回は少人数だったがこれがクラスでの実践になるとより多くの人の主張をすり合わせていかないとならないので、それをどう指導すればいいのか悩むところだし、そもそも30~40人でこの精度の対話ができるのか?と疑問にも感じた。